車載電池世界最大手の寧徳時代(CATL)が太陽光発電産業への参入を焦っているという噂が業界を賑わせている。
中国のテックメディア「晩点LatePost」が9月9日、CATLが太陽光発電モジュールの出荷量国内第8位の一道新能(DAS Solar)を40億元(約800億円)で買収しようとしていると報じた。その後、噂は次第にエスカレートし、買収先の候補は太陽光発電モジュールトップ4の隆基緑能科技(LONGi Green Energy Technology、ロンジ)、晶科能源(JinkoSolar、ジンコソーラー)、天合光能(トリナ・ソーラー)、晶澳太陽能科技(JASolar)へと変わり、なんとしてもそのうちの1社を手に入れると言わんばかりの勢いだというところまで発展した。 CATL創業者の曾毓群氏は同月27日夜、珍しく公の場で取材に応じ、一道新能を含め太陽光発電企業の買収は今のところ考えていないとの考えを示した。 曾氏が噂を否定しても、太陽光発電業界でこれを真に受ける人はほぼいない。CATLが太陽光発電事業を諦めるはずがないというのが業界の共通認識だ。
CATLにとって今、蓄電システムは2番目に大きな事業となっている。公表されたばかりの2024年上半期決算によると、車載電池事業が売上高の68%を占め依然として最大だが、蓄電システム事業の割合も17%に拡大した。車載電池の売上高が前年比19.2%減だった一方で、蓄電システム事業は同3%増だったことは大きな意味を持つ。 太陽光発電を手がける中規模以上の企業は、ほぼ全社が2023年に蓄電ビジネスに参入している。太陽光発電モジュールの価格競争が激化してきたことから、各企業は蓄電ビジネスで利益を上げようと考え、太陽光発電と蓄電システムをセットで販売しようと躍起になった。 今年に入り国内外の蓄電システム市場は、太陽光発電企業の参入で爆発的に拡大している。
中国では8月までに、新たに49.03GWhの蓄電システムが導入され、市場規模は前年比128.9%の約500億元(約1兆円)に達した。米国、欧州、中東などでも増加率は100%を上回った。 ところが太陽光発電事業を手掛けていないCATLは競争に加われず、受け身に回っており、蓄電システム市場を他社に差し出している格好だ。 蓄電ビジネスにおいて鍵を握る新興市場の中東でも、CATLの存在感は徐々に薄れている。蓄電システム大手の陽光電源(Sungrow)はこれまで主にCATLからバッテリーを調達していたが、陽光電源が中東で新たに受注した7.8GWhのプロジェクトでは、調達先が電池大手の中創新航科技(CALB)に変わった。
「現在の中東市場では基本的に2社がペアになっている」と、ある企業のアラブ首長国連邦(UAE)担当者は語る。顧客を握っているインテグレーターは、力の弱いバッテリーメーカーを選び、提携において自らの主導的な立場を保とうとする。 CATLは蓄電システム事業の戦略目標や計画について多くを公表していないが、新エネルギー車の価格競争が厳しさを増し、成長スピードが鈍化している現在の状況下では、蓄電システム事業が成長を担うエンジンになり得ることは明白だ。他の車載電池メーカーも、早々に手を打ち始めている。例えば業界第2位のBYD(比亜迪)は、アフリカと南米で太陽光発電事業を推進している。
太陽光発電業界では1年近く価格競争が繰り広げられた結果、一部の中堅企業が存続の危機に直面しているなど、本来ならば買収には絶好のチャンスだ。多くの太陽光発電企業では、時価総額がピーク時の1割程度にまで縮小しており、まさに買収にうってつけのタイミングと言える。
曾氏が語ったようにCATLが太陽光発電企業を買収することはないとしても、太陽光発電を避けて通ることはできないことは誰の目にも明らかだ。
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